日本におけるM&Aの歴史とこれからの展望

日本のM&A件数は、バブル期を黎明期とし、認知されて大きく伸びてきています。
これはバブル崩壊以降、国内経済が低成長化する一方で、発展途上国が勢いを上げたことにより、企業間競争の激化、及び収益力が低下したため、多くの企業が事業併合、事業買収など、即効性のある収益力向上、企業価値向上のために積極的にM&Aをした結果と言われています。

グラフを見ると、1990年代後半から2000年代前半にかけて急激に増加したことがグラフからわかります。
1990年代が500件に対して、2015年には3,000件を突破しおよそ6倍の増加となっています。

そして、2017年に3,000件、2018年には3,850件と安定して伸びてきており、金額は29兆8,802億円規模となり、今後も拡大することが予想されています。
ただし、7年連続の増加となった状況でしたが、コロナウィルスの影響で多くの企業が売り手側になってしまったことから、バランスが崩れている状況です。
なお、国内の企業同士のM&Aは2,800件ほどと、全体のM&Aの件数の約70%を占めており、国内企業の売買がまだまだメインとなっています。

また、2010年頃に急激に落ち込みを見せているのは、リーマン・ショックや東日本大震災の影響による国内経済の縮小に伴い、企業が急激な業績悪化に直面したことがあげられます。
その後M&Aの件数は再び増加したのは、少子高齢化や人口減少を背景に、後継者不在の企業による事業承継や、海外市場への進出を図るために海外企業の買収、業界内の国際競争の激化を背景にした業界内再編などが積極的に行われているためです。

近年、M&Aという選択肢は、一般的になってきており、多くの国内の経営者に浸透してきています。
しかしながら、中小企業の経営者が抱える「後継者問題」や「人手不足」といった課題を解決するには、まだまだ知識や手法が一般化していないと考えられます。


◆事業承継問題の解決が必要な国内中小企業の現状
現在国内の中小企業は、全国で60%から70%と拡大してきており、深刻な社会問題となっています。
これは戦後日本の高度成長期に起業した経営者、団塊の世代が高齢となっているにも関わらず、子息が別会社に就職したり、純粋な少子化の影響、事業形態の変化による業態変更の必要性など、様々なネガティブ要因が挙げられています。
データでは、1995年から2015年にわたる20年間で、中小企業の経営者年齢の最頻値は47歳から66歳となっており、後数年でこの問題は更に深刻になります。

そして、赤字どころか、会社の後継者が見つからないために事業が黒字でも廃業せざるを得ないという問題に直面しているケースもあり、対策は急務とされています。
これを解決する手段は企業情報の正確な伝達と、正しいM&Aの制度づくりと考えられます。

また、2017年頃より、福祉事業・施設を始めとして、製造業、非製造業の別を問わず、全体的に設備投資の不足による生産性の低下が起きています。
これは、経済産業省/中小企業庁の『2018年度 中小企業白書』による。
IT化、DX対応などで、人件費や新規事業に予算を多く割いたり、補助金の対応をするものの、設備投資・安定化に対しての認知はいつの時代も後回しにされがちです。
特に事業の経営が困窮していると、施設や設備の修繕などに資金を回すことが難しくなります。
結果的に施設や設備の老朽化は進み、古くなった設備の維持管理にも大きなコストがかかり、新たな設備投資に資金を回せないという負のスパイラルに陥ってしまいます。


今後は後継者問題や人手不足、国内市場の縮小などといった問題が、さらに深刻化することが予想されます。
そのような状況の中で、現在は先述したような経営課題に直面していない中小企業の経営者も、今後も経営を円滑に行っていくためにその解決法を抑えておくことが重要です。近年、その解決策のひとつとしてM&Aの活用が期待されています。
近年、その解決策のひとつとしてM&Aの活用が期待されているのです。